土の章 熊に学ぶ





  4 ワンポイント・アドヴァイス 

 
 まず首だけを動かすことから始まります。しかしただ頸椎だけが動くわけではありません。

 頚椎は胸椎につながり、胸椎は腰椎につながっています。つまり、背骨全体が微妙にひねられるということを、ほんの少し感じながら練習しましょう。

 ただ首を動かすことは誰でも簡単にできますが、背骨全体をデリケートに感じるようになるためには、少し練習が必要です。繰り返すうちに、首の回転によって体の動きが導かれるのがわかるでしょう。

 「振り返る」は、体の中心軸を通すことを目的にしています。コマに軸があるように人体には一本垂直に軸が通っています。この軸を経絡でいえば、奇経八脈のひとつ「衝脈」です。

 「一脈通ずれば百脈通ず」、つまり、この衝脈が通れば、残り全部の経脈にいい影響が及ぶということです。

 衝脈はゆっくり振り返る動作を繰り返すと自然に通るのです。百会や額の周りに感じられる圧力感が、まず衝脈に「気」が通じはじめた証拠です。

 しばらくこの運動を行った後、動きを止めて、頭頂の「気」を喉に、胸に、腹部に、下腹部に、そして会陰に下ろせるようになれば、衝脈が完璧に通ったといえます。

 この動作は熊の動作を理解するために私が考案した予備的な練習法ですが、この動きそのものが大切な「動きのメッセージ」で、八段錦の中では「後ろを振り返って百病を癒す」という、とてもオーバーな名前で紹介されています。

 
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